体験記
生き方の変更からの今
ペンネーム: まり子の母
私は今、ひきこもりでお悩みの方の相談の場のボランティアをしています。
数年前までは、のほほんと生きていた3人の子の母親。そんな私を変えたのは、中一で不登校になり今も家で過ごしている、二十歳の息子の存在です。
のほほんと生きてきた私ですが、実は子育てに関しては過干渉。曲がったことが大嫌い。こうでなければ。なぜこんなことが出来ないの?そんな姿勢で子供と向き合っていました。
ある時、妹が先に不登校になり(現在は回復)、兄はいじめに合い、当の次男も不登校に。これらが一度に起きました。そこで我に返る私。生き方の変更を余儀なくされることとなりました。
とは言え初めは、現実を受け入れられないところから始まりました。真夏に1カ月もお風呂に入らなかったり、部屋から包丁が出てきて青ざめたり、取っ組み合いの喧嘩もしました。そんな私を一瞬で救ってくれたのは不登校親の会です。藁にもすがる思いで参加したその会では、参加者しているお母さんが、皆さんニコニコされていることに驚いたことを覚えています。子供が学校に行けなくて笑っていられるの?と。
まずは、学校には無理に行かせなくていい。子供のありのままを受け入れる。先回りの心配はしない。など、今までやってきた子育ての真逆の教えに戸惑いましたが、逆に無理に学校に行かせなくていいという言葉にホッして、子供が不登校でも笑える。ということがすぐに理解出来ました。その後は傾聴を学んだり、じっくり話を聴いてもらったりしているうちに、自分の時間も大事に出来るようになっていきました。
その反面うちの息子のような子は、義務教育中に全く勉強をしていなくても卒業を迎えるという現実がやってきます。親はそこで一気に不安になります。その後の進路で担任の先生から通信制の高校を勧められ、面接や論文など本人の頑張りもあり入学することが出来ました。しかし学習習慣がないのと、対人恐怖症があったせいで続きませんでした。そもそも本人が自分で望んだ進路ではなく、選択肢が無かったため仕方なく進んだ道。高校在学中は息子にストレス行動があったり、私に諦めきれない気持ちが出てきたり、逆戻りの状態でした。
そんなことがありつつも、息子との関係はずっと良好です。家族で旅行やキャンプに行ったり、息子の家での役割として一、日おきの風呂掃除はもう3~4年続いています。昼夜逆転してしまうことや一人で出掛けられないことなど、出来ないことに目を向けるのではなく出来ることに目を向ける。親も人間なので時々現実に落ち込んだりイライラもしますが、現在はスモールステップを穏やかに見守る日々です。
さて、いよいよ私がひきこもり相談のボランティアを始めるきっかけです。令和元年に、県外で開業されている地元出身の精神科医の先生が、ひきこもりの講演会と相談会を開催されました。その時に関わらせていただいたのがご縁で、その時の実行委員メンバーの方々とひきこもり相談の場を作ることになりました。
本格的に始動したのは1年後。スタートが新型コロナウィルスの流行と重なり自由に活動が出来なかったり、実行委員メンバーも自分の仕事の合間の活動のため手探り状態ではありますが、月に一回必ず相談会やイベントを開催しています。チラシ作成や SNS で発信したりで、思い切って参加してくださるご家族の方も増えてきました。今なら相談に行ける!と思ってくださった時に、いつもそこにある存在でありたいと考えています。
まず相談に来られる方は、当事者さんの状態に疲弊しておられます。じっくりお話を聴くと、ほとんどの方が早く普通に仕事に就いて欲しいと言われます。相談したら解決する...と淡い期待を持って来ているのに、そうでは無いことに一瞬がっかりされる方もおられますが「急がば回れ」です。この子をどうにかしてやらなければ!という気持ちは一旦横に置いといて、まずはありのままを認めること、最後は「ご自分も人生を楽しんでくださいね。」とお伝えします。
それはもちろん私も通ってきた道で、今も続いています。これらの言葉は、自分自身にも向けても発しています。かつて過干渉で、子供たちを怒ってばかりいた自分がひょっこり顔を出そうとするのを防ぐための活動でもあります。ご家族に声を掛けるたびに「そうだった、そうだった」と、確認しています。
最後に、私は人前に出て何かをするというようなタイプでは全くありません。こんな風に、生き方の変更からまさか自分がこんな活動をするとは夢にも思いませんでした。今は、自分がやらなきゃ誰がやる!という言葉がいつも頭の中をグルグルしています。でもこれらの活動が続けられているのは、一緒に活動してくれる方々がいてくれるお陰です。息子の自立に携わってくださる方々との出会い。またその周りの色んな方々との出会いも大事にしています。一人では到底出来ない活動なので、今ある環境に感謝してこれからも私が出来ることをライクワークとして一生懸命やっていくつもりです。そして、一人でも多くのひきこもりでお悩みの方に寄り添えたらと思います。