体験記
君が病を連れ去った
ペンネーム: 佐也
僕が病になったのは、高校二年のころだった。普通の全日制に通っていて、普通に友達も 先輩にも恵まれて、普通の高校生活を送っていた。
ある時だった。僕はテスト期間中、ゲームもしずに、勉強に熱心していた。日本史は僕に とって、一番自信があった。ところがテスト返却日に日本史のテストが手元に届くと、僕は 顔を真っ青になって、暫くテストを見つめていた。結果は欠点。あんなに勉強したのに…。 今までの努力が全て無駄だったのか、そんな気がして、涙目になりながらも、再試の教室に 向かった。また、今度は、指導室へ行くと、腕を組んだ日本史の先生がこの前の再試のテス トを机に叩くように置いた。
「いい加減、しっかり勉強しろ」
こんな日があってから、自分の自身は段々と無くなっていた。
ある日、僕は、何度も欠点を出して、反省文を書いていた。僕は、これからどうなるんだ ろうか、もしかしたら先生に来られて、進級できなくて、クラスの人に見下されるのかな…。 そんな事を思っていたら、学校に行くのも辛くなった。毎日、泣きながらだけど、“君”に手 をつないでもらいながら学校に向かう。でもそれも限界が来て、気づいたらベットから出れ なくなった。僕は不登校になったんだ。学校にも行けない自分は、もうおしまいだ。そう思 いながら、ベットの中で泣いていた。
ある日、親に連れられて精神科へ行った。先生には、転移うつですね。と言われた。 気づいたら、もう秋になっていた。ずっと部屋のカーテンを閉めていたから、外の様子と か、忘れかけていた頃だった。一件の LINE が来た。
「今,佐也の家の前にいるから出ておいで。」
“君”だった。久しぶりに会うなあと思いながらドアを開いた。すると、”君“が飛び出してき た。
「マジで心配したんだからな!本当に!」
そう言って“君”は僕の背中を撫でた。その瞬間、僕のうつだった気持ちが、ふわっと消えた ような気がした。 「たまには息抜きでもしなよー?」その言葉が、心に残った。
それから天気がいい日は、外に出て、散歩をする。歩いて、歩いて、歩いた。僕は歩くの が楽しくなった。 あの日“君”に会わなかったら引きこもりのままだったかもしれない。うつが消えた今は、 視界も明るくなって色んな人と関わりを持つ事が出来た。 “君”が病を連れ去ったんだ。君のおかげでうつは消えた。本当にありがとう。君と友達でい られてよかった。そう思いながら、僕は今日も、歩くために玄関のドアを開いた。
それからしばらく経った後、僕は引っ越しをした。
僕は何度も繰り返す引越しにストレスを感じて 正月を迎えたのと同時に爆発してしまった。
また病を抱えてしまった。が、そんな中、光を指してくれたのはやっぱり、“君”だった。 病の波が酷い時も、“君”が助けてくれた。ゼリーを送ってくれたり、ご飯連れて行ってくれ たりしてくれた。そんな“君”が、僕にとって支えだった。
突然の事だった。“君”が、病を抱えてしまった。
仕事の辛さで抱えてしまった。“君”の笑顔を守らなければ...。そう思った僕は、毎日欠かさ ず LINE をした。 「おはよう」そして、電話もした。
「佐也らしいな、やっぱり」そう言って“君”の笑い声が聞こえた。それだけでいいんだ。
“君”が笑ってくれるだけで。そうやって、2人で支えあう。
「そうだ!夜ドライブでも行かない??」
“君”はそう言って、僕を誘った。
「行こ行こ!」
そう僕も“君”に会うのがまた楽しみで仕方ない。
「いつものコインランドリーで!!」
そう言って、僕らは約束をして、話を終えた。
2人はいつものコインランドリーに集合した。
「よっ!」
“君”は笑顔だった。
「元気そうじゃん!!」
僕も笑顔になった。
それから、街を一周して、晩御飯を食べに行く。
「“君”が好きなものでいいよ」 僕はそう言うと、えー?と君は照れた顔で
「じゃあ焼肉!!」 と、前の焼肉屋を指さす。
僕は初めて焼肉屋に行く。また “君”のおかげで 色んな事を知れる。僕はワクワクして向かう。
ここは、“君”のオススメの焼肉屋らしい。
“君”はスキップしながら店内に入った。
そして、お気に入りの場所に座る。
2人で話しながら、箸を進めた。
「佐也のおかげで病気吹っ飛んだ気がしたよ」
“君”はそう言った。 僕は嬉しかった。
「それはよかった」
“君”は僕を見つめて話す。
「本当の親友ってこういう事を言うんだな、お互い様じゃん」
そう言って、また“君”は笑った。
僕は初めて親友と呼び合う友達ができた。
お互いの病を連れ去って、お互い笑顔になって、とても幸せだ。
「ありがとうね」
僕はそう言うと、“君”も
「こっちこそありがとう」 “君”は家まで送ってくれた。
「じゃあまたね!」 そう言って別れた。
明日もよろしくね。心の中でそう思った。